流れに従ひて己を失はず.

日々の研究について書きます

1年前の自分へ

(こちらは社会人学生 Advent Calendar 2020 - Adventarの5日目の記事です.)

1年前の自分へ
この文章を書いているのは2020年12月5日のお前だ.
この10月で博士課程4年生になった.ああ,そうだ4年生だ.気を落とすな...気持ちはわかる...3年では無理だった.そして来年2021年春でも無理そうなので2021年の秋修了を目指して頑張っているところなんだ.
いいか,お前にとって来年2020年は色々大変な年になるから心しておけ...ここにそのためのアドバイスを残すから参考にしてくれ.

お前はいまやっているシミュレーションもなんとなく上手くいっているし,後は実験装置組み上げてデータとって,4月くらいには論文出るなーとか思っているだろう.甘い!!!甘いんだよ...よく聞け,いま自分がこの文章を書いている2020年12月5日の時点で論文はまだ出ていない.ああそうだ...出ていないんだよ......
大きな理由は3つだな.
新型コロナウイルス
・シミュレーションバグ
キャリブレーションうまくいかない

じゃあ2020年を時系列順に説明していく.

1月:シミュレーションの結果を反映した試作品が出来上がる頃だな.実験装置の例の部分の作り方だが今手元に2案あるだろう.それな,手間のかかる方の案があるな,それでやれ.1つ目の案だと誤差が大きくて使えないんだ.なんとなーくうっすら勘づいていると思うが,やっぱり出来るだけ頑張る方法じゃないとダメ.1つ目の案をまず試した結果のこの試作品だが,結果これは使えなかった.

2月:サンフランシスコ開催の学会に行く*1.これはいい感じに出来る.準備もうまく出来るし,トラブルもない.展示も面白いし色々見て回れ.メーカーの人とも色々話せ.アルカトラズ島の見学ツアーは超おすすめなので絶対に行け.ハンバーガーとルートビアがうまいぞ.次のテーマのアイデア出しもあるからここでいろいろ考えておけ.

3月:このあたりから新型コロナウイルスというのが流行り始めていろいろ状況が怪しくなってくる.会社は基本的に在宅になる.ちなみに現時点の2020年12月でも在宅勤務中でこれは本当にありがたい.
いよいよ実験に着手するんだが,先に言ったとおり1つ目の案で作った試作品だと誤差があるから思い通りの実験ができない.結果も出ない.でもここでいろいろ試行錯誤したのは後々役に立つ.ああ,あと...3月な...ノートPC,「壊れるかもしれないけどこれ試してみようかな...」とか思うことするなよ?絶対にするなよ!!!いろいろ世の中が大変な時期にハードからの復旧は本当に大変になるからな!!!

4月:緊急事態宣言とかいうアニメとかでしか聞いたことのないような名前の状況に世の中がなる.基本的に外出が出来なくなる.家でゆっくり仕事と大学の事出来る〜とか一瞬考えてるだろうがそうはいかない.お前のもうすぐ2歳になる息子の保育園もせっかく4月から始まったと思ったら1週間で休園になるぞ.これがどういうことか.以下の時間割を見てくれ.

6:00-7:00 息子氏起床→自分も起床
7:00-8:00 朝ごはんとアンパンマンたいそう3セット
8:00-10:00 息子氏とプラレール→公園
10:00-12:00 妻と交代して在宅作業
12:00-13:00 お昼ごはん
13:00-15:00 在宅作業(息子氏昼寝)
15:00-17:00 息子氏と公園orプラレールor在宅作業(妻と交代)
17:00-19:00 お風呂,晩ごはん
19:00-20:00 アンパンマンたいそう3セット→息子氏は就寝
20:00-24:00 在宅作業
24:00-25:00 就寝

つまり自宅保育になり,同じく在宅勤務の妻と交代で息子氏と遊ばねばならん.息子氏の起きている間は必ず自分か妻が息子氏にマンツーマンディフェンスしないといかん.あと言っておくが一日中家でプラレールなんてのはだめだ.絶対に夜寝ない.雨が降っても公園にお散歩に行け.心配せんでも息子氏は行きたがるのでお付き合いするだけでいい.そして息子氏に少しでもお遊び疲れいただくのだ.そろそろ大人の速歩きじゃ追いつけない機動性だろ?もう一緒に外で遊ぶそれだけで大人はくたくたになる.日中にできる作業は限られると思ったほうがいい.寝食を忘れてコーディングなんてことはもう絶対できない.自分の体力を最大限残しつつ息子氏に夜ぐっすり寝ていただくラインを見極めろ.緊急事態宣言自体はGW明けに解除になるが,5月いっぱいまでは登園自粛期間なので2ヶ月間この生活になる.心して臨め...
もちろんだが大学も行けなくなるぞ.あと,もともとやっていたシミュレーションにバグが見つかる.あの気づいた瞬間にすーっと血の引く感じは本当に良くない.これを防ぐために何ができたかというと結構難しくて,もっとコードテストの勉強をしておけばよかったのかな,くらいしか無い.ユニットテストは通る系だったので結合のところで気を抜いていた.どうかお前は気づいてくれ.このせいでだいぶ巻き戻ってしまう.この件もあるし,大学にも行けないしなので,コードのリファクタリングと実験の組み直し,あとは関連する分野の勉強をすることになる.

5月:もういろいろキツくて記憶がないんだが,今メモを見ると実験装置の例の部分の作り方,やっとここで2つ目の手間のかかる方の案でいこうと決めているな.それでいい.あとはこのタイミングで実験装置全体の設計を十分時間をとってできたのが良かった.結果,組み上がる実験装置はいい出来になった.
もう日中は息子氏との外遊びに全振りしているからサングラス*2なんかを作っちゃう.めちゃくちゃ良かったので早く買え.

6月:このあたりで9月頭の特集号を狙うようなスケジュールを引く.息子氏の保育園が再開となる.保育士さんたちには最大限の感謝をしろ.圧倒的感謝で臨め.
息子氏が日中保育園に行くので時間はできるが,ここまでの2ヶ月の借金で仕事が忙しくなるのと,実験装置の一部を自作できないかな?とかいう,結果的に時間を無駄にする検討を挟んでしまい,あまり進捗がないまま1ヶ月が溶ける.自作できると試行錯誤のプロセスが楽にできる点は良いがクオリティが落ちる.今回はクオリティが大事だったからプロに任せたほうが断然良かった.

7月:このあたりからキャリブレーションが収束しない問題にぶち当たる.そう,最初に上げた遅延要因3つの内の3つ目.実験結果とシミュレーションのすり合わせが収束しない.原因は2つあって,最終的にそれに気づくのは1つ目が8月頭,2つ目が8月中旬になる.それまで本当にいろいろ試すもうまく行かなくて心が折れる.1つ目はアルゴリズム的な工夫で解決できて,2つ目は設計を少し近似でやってるところを厳密に直せば解決できる.頑張って早く気付け.息子氏に「なんでキャリブレうまくいかんのかな???」とか訊くといい.ヒントになる単語を口走る.
新型コロナウイルスの前はボルダリングで身体を動かせていたが,そうはいかなくなる.会社にも行かないので昼休みの懸垂もできない.屋内自転車ローラー環境を整備しろ.自分は7月にスマートローラー*3を買ってzwift環境を得たが,もっと早くてよかった.数年悩んでいた腰痛も消える.早く買え.

8月:大学に出られる環境が少しづつ整い,ちゃんと実機実験ができるようになる.いろいろ実験してやっとキャリブレーションがうまくいく.最終的な実験もうまくいく.だがちょっと遅すぎて目標だった9月の特集号には間に合わない.

9月:半期の締めだから仕事が忙しくなる.もともと僅かな隙間でやっている学生生活だからちょっと仕事が忙しくなると時間がなくなる.修士の頃だったら2日位かければサクッとできたことに平気で1ヶ月かかったりする.あと,さっき言ったzwiftだがな,あんまり追い込むと体調を崩す.いい汗かいたな〜くらいでやめておけ*4

10月:データ取りなどなどしていたら論文の第一稿が仕上がったのが10月中頃になってしまう.月の後半は新テーマのための予備実験の予備実験みたいなことをやってデータを取る.あとはその環境構築に1日くらい使う.

11月:なんやかんや論文の添削やり取りを指導教員としていたら1ヶ月経つ.新テーマのシミュレーションもちょこちょことできるがあまり進捗が出ない月になる.ちょっと気が緩んだ週があって,「俺の魂がやる気になるのを待つ」*5とか言っていたら数日溶かした.やれ!締切が先だからとか言って寝かしておくと間に合わなくなるぞ!やれ!!いいからやれ!!!手を動かせ!!!

...という感じ.
冒頭でまだ論文は出ていないと書いたが,いちおう投稿寸前のとこまでは来ている.そこは安心してくれ.
では健闘を祈る.